自分の練習の合間を縫って、後輩の指導に時間を割く順平。
今日教えているのは、速いスマッシュを打つための肩の使い方だ。
ところが、その指導を聞いた後衛のスペシャリスト大垣は・・・
スポンサード リンク
自分の練習の合間を縫って、後輩の指導に時間を割く順平。
今日教えているのは、速いスマッシュを打つための肩の使い方だ。
ところが、その指導を聞いた後衛のスペシャリスト大垣は・・・
スポンサード リンク
まだ頼りないところはあるが、その丁寧な指導から彼を慕う後輩は多い。
「こ、こんな感じですか?」
「そうそう。その角度を忘れちゃダメだよ。」
「なるほど。確かに肩が楽な気がします。」
今回指導したのは、スマッシュ。
特に、最大パワーでラケットを振るための腕と肩の位置関係「ゼロポジション」を重点的に説明した。
愛用のバドミントン教本にも、強いショットを打つためには、肩が自然に動かせるゼロポジションが大切と書かれていたからだ。
まだ経験の浅い彼に、どう説明すれば理解してもらえるか、頭を使う順平。
『グリコのバンザイの角度で腕を上げる』
『両手を頭の後ろで組んで、肩の位置はそのままで腕だけを伸ばす』
例を変え、実際にポーズを取らせ、繰り返し指導した。
その甲斐あってか、後輩はきちんと理解してくれたようだ。
順平はホッと胸をなで下ろした。
後輩は、ゼロポジションからのスマッシュを繰り返して練習している。
覚えたことを忘れたくないのだろう。
「そうそう。何度も練習してしっかり覚えるんだよ。」
「はい。」
練習熱心な態度が好印象だ。
見ていて、自分まで頑張ろうという気になってくる。
その時だった。
「ちょっとちょっと順平ちゃん!何変なこと教えてるの!!」
そう、声をかけてきたのは用事で遅れてやってきた大垣だった。
どうやら、他のメンバーから後輩に教えていたことを聞いたようだ。
大垣が何を怒っているのかわからず、キョトンとする順平。
「ゼロポジションがスマッシュに最適なんて、間違いを教えちゃダメだよ!!」
「いや、だってどの教本にもゼロポジションが大切だって書いてますよ。」
「・・・順平さん。僕に教えてくれたのって間違ったことなんですか?」
大垣と後輩。
2人の視線が順平に集中する。
やがて沈黙を破り、大垣が口を開いた。
「理論や常識がいつまでも同じなんて思っちゃダメだよ。」
ポイント
『ゼロポジション』は、1961年にインドの整形外科医によって提唱された、腕と肩の位置関係。
元々は、患部にかかる負担を最小限に抑え、回復を高めるために発見されたものでした。
それがやがて、ケガが防げる上に、最大筋力が発揮できる理想のポジションとしてスポーツ界に取り入れられ、常識となったのです。
しかし、最近の研究ではこれが間違いであることがわかっています。
人間がスイングの際に一番力を入れやすいのは、ゼロポジションを少しずらしたポジション。
実際、プロ野球のピッチャーを見ると、自分の筋力やフォームなどを考慮して、腕の角度を少しだけ上下にずらしています。
これは、ゼロポジションに限ったことではありません。
水分補給の方法やウサギ跳びなど、一昔前の常識がひっくり返ることは珍しくありません。
バドミントンのトレンドもスポーツ理論も、日々進歩しています。
常にアンテナを張り、なおかつ鵜呑みにしないように。
経験と照らし合わせて吟味していく姿勢を忘れないプレーヤーや指導者でありたいものです。
スポンサード リンク