ダブルス力のある前衛を育てる練習法

ダブルス

より上のステージに上るために、順平の練習は続く。

今日のメインはダブルス練習の定番「オールショート」。

順調にこなす順平であったが、前衛マエストロ元木は・・・

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(もっと速く、もっと正確に、もっと強く・・・)


コートに順平の汗がしたたり落ちる。

今順平がやっているのは「オールショート」。

ネット際から打たれるシャトルを、ひたすらノッカーに返す基礎練習だ。


「順平君、うまくなったねぇ。」

「いいえ、まだまだです。」


ノッカーを務めてくれた先輩からの褒め言葉に、謙遜しながらも顔が緩む。

自分で言うのも何だが、今日は調子が良い。

リズムもコントロールも、自分の思い通りだ。


(さて、もう1セットやろうかな。)


そう思っていた矢先だった。


「あぁ、ほんとうにまだまだだな。もっとうまくなれよ。」


聞き覚えのある野太い声。

我がチームが誇る前衛マエストロ元木だ。


(何なんだこの人はいつもいつも・・・)


心の中で悪態をつく順平。

ノッカーの先輩も何が悪かったのか不思議に思ったようだ。


「元木。順平君に厳しすぎないか?良いオールショートじゃねえか。」


しかし、元木の態度は変わらない。

彼のバドミントンに対する姿勢は、どこまでも厳しい。


「後輩を甘やかすんじゃねえよ。俺ならこの程度で満足されたらダブルス組みたくねえわ。」


元木の物言いに途方に暮れる2人。

そんな2人を見た元木がラケットを握った。


「口で言ってもわからねえなら体で教えてやる。コートに入りな。」


元木をノッカーに迎えてのオールショートが始まった。


確かに先ほどの先輩より、鋭くきついコースに球が飛んでくる。

気を抜いたら取りこぼしてしまいそうだ。

必死で食らいつく順平。


(これが前衛マエストロのオールショートか。でも、これなら何とか拾える。)


そう思った時だった。

順平の胸元にプッシュが打ち込まれた。


思わぬ球に、慌てる順平。

何とか返せたものの、大きく体勢を崩してしまう。

そこに容赦なく次の球が打ち出され、取りこぼしてしまった。

元木はラケットをクルクル回しながら、口を開いた。


「どうしたよ順平。それくらい取れなくてどうする!」

「無茶言わないでくださいよ。オールショートでプッシュなんて反則でしょう!!」


ほおを膨らませる順平。

しかし、元木はそんな順平の態度を一喝した。


「バカ野郎!オールショートにプッシュがないなんて誰が決めたんだよ!

 実戦で一番使うことをやらない練習に、価値などあるか!!」

ポイント

勝てるチームの練習はここが違う」でも紹介したオールショート。

主に、ネット際での前衛のレシーブ力を鍛えるためのノックの1種。

バドミントンダブルスの選手なら必ず1度はやる練習です。


さて、この時球出しに使われるショットに注目してみましょう。

ロブかヘアピンがほとんどです。

そして、ほとんどの人はそれが当然だと思っています。


しかし、実戦での前衛のレシーブを考えてみてください。

胸元へのプッシュで動きを止められてから、離れた場所にヘアピンを打たれることが多いですよね。

にもかかわらず、オールショートの球出しにプッシュが入っていないというのでは、練習として片手落ちです。


今のバドミントン、特にダブルスは相手の足を止めてから攻撃するラリーが主流。

勝てるプレーヤーになるためには、普段の練習からこの動きに慣れておくことが不可欠です。


今回のオールショートはその一例。

ほかの練習でも、もっと実戦的にできないか考えてみましょう。


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