ダブルス名人はこの練習を取り入れる

ダブルス

全体練習が終わっても、順平の練習は続く。

今日も、体育館が閉まるまでやるつもりだった。

そんな中、元木が、なにやら普段と違う練習を始めた。

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「よし、今日はここまで。お疲れさん。」


ダブルスでのゲーム練習が終わり、キャプテンの号令がかかる。

それまでの張り詰めた緊張感が、ドッとゆるむ。


しばらくすると、体育館は急に静かになった。

自主練に取り組むメンバーたちは、無言でそれぞれの課題に取り組む。


体育館の隅に陣取ってバドミントンの教本を読むもの。

普段できないダブルスのフォーメーションを繰り返し練習するもの。

その取り組みは様々だ。


(今日のダブルスは、なかなかうまくいったぞ♪)


順平はその日の練習に手応えを感じていた。

すでに全体練習を終えているというのに、体が軽い。


一息つこうとコートを出ると、隣のコートでは前衛マエストロ元木が練習をしていた。


これを見た順平は、妙な違和感を覚えた。

おかしい。

何となくいつもよりギクシャクしているような・・・


その謎はすぐに解けた。

彼は、利き腕と反対の左腕でラケットを持っていたのだ。

ケガでもしているのだろうか。


不思議に思った順平は、元木が休憩に入るのを待って、声をかけた。


「あのぉ、元木さん・・・何してるんですか?」

「おう、順平か。
 見りゃわかんだろ。練習してるんだよ。」

「はぁ・・・」

「ん?何で左手でやってるのかって?
 そうか、知りたいのか。しょうがねえなぁ・・・」


何も聞いていないのに、説明を始める元木。

普段は仏頂面をしているが、人の面倒を見るのは嫌いではないらしい。


「利き手を使わないと、いつもなら普通にできることでも1つ1つ意識しないとできないだろ?」

「はい。」

「だからたまにやると、普段無意識にやってることに注意を向けられるんだ。
 スランプの時や、基本を確認したいときにやると効果抜群なんだぜ。」

「へぇ。なるほどですね。」

「それに、右手と左手は神経でつながっている。
 だから、利き手じゃない手で練習すると、利き手でのプレーもうまくなるのさ。」

ポイント

昔、若くして全日本を制した男子テニスプレーヤーがいました。

そんな彼が、ある日大切な利き手をケガしてしまいます。


しかし彼のテニスに対する情熱は揺らぎません。

次の試合まで1分1秒もムダにできない中、すぐに利き手とは別の手で練習を再開します。


そして翌年。

彼は、実戦から離れていたブランクをものともせず、全日本2連覇を達成したのです。


この練習法には、元木が述べた意外にも、大きな効果があります。

それは、右脳と左脳が均等に使えるようになること。

人間の脳は、左右の全体のバランスがとれたときに、最大の力を発揮します。

そのため、利き手と反対の手を意識して使って脳全体を鍛えれば、プレーの質をあげられるのです。


これだけのメリットがあって、バドミントンに使わない手はありません。

早速今日から、ちょっとした練習の空き時間や、クールダウンに取り入れてみましょう。


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