ある日のオープンバドミントン大会。
順平がペアを組むのは、サーブのクリスことクリス花柳。
それは、2回戦のゲーム終盤でのことだった・・・
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ある日のオープンバドミントン大会。
順平がペアを組むのは、サーブのクリスことクリス花柳。
それは、2回戦のゲーム終盤でのことだった・・・
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久しぶりの顔合わせで、コンビネーションがかみ合うか心配だったが、いらぬ心配だった。
クリスは終始、順平の動きをフォローしてくれた。
サーブばかりに目がいきがちだが、ダブルスのなんたるかをキッチリと押さえている。
おかげで、1回戦はこれといったトラブルもなく、順調に勝つことができた。
午後から始まった2回戦。
相手は前回のチャンピオン。
緊張する順平を、クリスがたしなめる。
「順平君、何固くなってるのさ。」
「だって・・・チャンピオンですよ。まさか2回戦で当たるなんて・・・」
「何言ってるんだい。遅かれ早かれ当たるんだ。」
「そりゃまあそうですけど・・・」
そしてゲームは始まった。
クリスのサーブが冴えて、僅差ながら第1セットを奪うことができた。
第2セットも、2点のリードで中盤を迎えた。
しかしさすがはチャンピオン。
一向に動じる様子がない。
淡々とゲームを進める相手ペアに、順平は次第に焦りを感じだした。
(くそ、引き離せない・・・まだあと8点取らなきゃいけないのか・・・)
順平のサーブ順が回ってきた。
ここでミスをすれば、相手に流れがいきかねない。
緊張で震える足に、グッと力を込めた。
少しコントロールが乱れたが、何とかアウトにならずに済んだ。
相手の返球をクリスが押し込む。
(よし、あと7点!)
ほっとする順平。
しかし、そのとき相手がニヤリと笑ったことに、彼は気づかなかった。
ゲームはこのまま順調に進むかと思われた。
だが、次のラリーから、相手は順平に狙いを絞り出した。
思わぬ集中打に、ミスを連発する順平。
リードはあっという間になくなり、そのセットを押し切られてしまった。
最終セットへのコートチェンジ。
クリスがぼそりとつぶやいた。
「君にはガッカリだよ、順平君。何で相手に弱みを見せるようなことをするかな。」
身に覚えのないことを責められ、合点のいかない順平。
「あんな集中打を浴びたら、誰だって焦りますよ。」
「そのことを言ってるんじゃない。問題は集中打を浴びるような隙を見せたことだ。」
「僕のどこにそんな隙があったって言うんですか?」
納得がいかず、食い下がる順平。
クリスはあきれたように首を横に振った。
「じゃあなんであんなに早くサーブを打ったんだい?あれじゃ早くゲームを終わらせたいって言ってるようなものだよ。」
ポイント
バドミントンの勝敗は、スキル5割・メンタル5割。
こちらの不安を相手に漏らすことは、このメンタルの部分に大きな陰を落とすことになります。
攻め急いでいるとき、やってしまいがちなのが、動作を速くしてしまうこと。
・ 審判のコールと同時にサーブを打つ。
・ 相手がサーブを打つそぶりを見せると同時にレシーブ体勢に入る
といった行動は、その典型です。
こんなことをしてしまうと、経験のある相手なら、すぐにこちらの不安を見抜いてしまいます。
サーブは、バドミントンのゲームの中で唯一、自分のペースで打てるショットです。
このメリットを活用すれば、自分のペースを守るだけでなく、相手をじらすこともできます。
ミスしないことで頭がいっぱいという気持ちはわからないでもありませんが、それではあまりにもったいない。
もう一歩進んだサーブが打てるよう、意識を変えてみましょう。
バドミントンは情報戦。
どれだけ相手の情報を引き出し、こちらの情報を遮断するかで戦況は大きく変わります。
何気ない行動が、その後のゲームを左右するということを、覚えておきたいものです。
ちなみに、あまりサーブに時間をかけると、審判にゲーム遅延と見なされてしまいます。
その点だけは注意しましょうね。
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