なぜあの人はショートサーブだけで勝てるのか

ショートサーブ

サーブのクリスこと、クリス花柳とペアを組んで隣町のオープンバドミントン大会に出場した順平。

首尾よく1回戦を勝ち抜き、2人でほかのゲームを観戦している。

多彩なサーブを打ち分けるペアに感心する順平に対してクリスは・・・

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1回戦を勝利で飾った順平・クリスペアはつかの間の休息を取っていた。

熱戦が繰り広げられるコートに視線を送る2人。

このゲームに勝った方が、次の対戦相手だ。


順平が特に注目したのは、若いペアの方だった。

ショートサーブ・ロングサーブ・フォアハンド・バックハンド・・・

多種多様なサーブを打ち分けている。


「クリスさん。あのペアすごいですね。あんなにいろんなサーブを打てるなんて。」


率直な感想だった。

だが、クリスはその言葉に首を縦には振らなかった。


「サーブ練習に時間を費やしたのは評価できるけど・・・勝つのは相手の方だろうね。」

「えっ?」


クリスが勝つだろうと予想したのは、今大会で最年長のペアだった。

使っているのはバックハンドのショートサーブだけ。

確かに際どいコースを突いているが・・・順平には相手ペアに比べると見劣りするように感じられた。


「確かに丁寧にコースを狙っていると思いますけど・・・あれじゃワンパターンですよ。」

「ワンパターンの何がいけないんだい?」

「えっ?だって読まれちゃうじゃないですか。」

「まぁ見ててごらん。」


そう言われ、観戦を続けた順平はあることに気づいた。


若手ペアの、年配ペアに対する返球パターンが単調なのだ。

同じような返球を、無駄のない動きで確実に処理する年配ペアの戦いぶりには、余裕すら感じられる。


それに比べ、若手ペアへの返球は種類が多い。

サーブリターンに振り回されている印象さえ見受けられる。


ゲーム中盤までは足を使って、何とか対応していた若手ペア。

しかし、終盤になってくると足が動かなくなり、力なく敗れてしまった。


年配ペアの洗練されたサーブ戦略に、舌を巻く順平。

言葉を失う順平に、クリスが声をかけてきた。


「どうだい?僕の言った通りになっただろ?厄介な相手が勝ちあがってきたね。」

「・・・サーブは種類が多けりゃ良いってものじゃないんですね。」


しかし、クリスはその言葉にも同意しなかった。


「どうして君はそう単純なんだい?バドミントンのことを何もわかっていない。」

「えっ?だって・・・」

「相手によってはサーブの種類で崩せる場合もあるさ。」

「・・・」

「ショートサーブに絞るか。ロングサーブを使うか。それを組み合わせるか。そこに正解なんてない。相手が嫌がり、自分たちのスタイルを活かせるのが最高のサーブさ。」

ポイント

より多種のサーブを打つというのは、相手に的を絞らせないという点ではそれなりに有効です。

特に初級・中級者レベルであれば、サーブの種類でゲームを優位にできる場合もあるでしょう。


しかし、サーブの種類を増やすことにはリスクも伴います。

それは、相手からの返球の種類も増えるということ。

これは、サーブリターンへの対応が難しくなることを意味します。


では逆に、例えばサーブをショートサーブだけにすればどうでしょう。

確かに相手が、こちらのサーブを予測しやすいというデメリットはあります。

しかし、ショートサーブには、「実はこれだけ!サーブリターン対策。」でも紹介した通り、相手の返球をロブ・ヘアピン・プッシュに絞れるという特徴があります。


これは、スマッシュやクリアに振り回されずに済むということ。

コート前面でのコンパクトな打ち合いが得意なペアにとっては、大きなメリットですよね。


実際、トップクラスのペアでも、ショートサーブばかり・ロングサーブがほとんどということはよくあります。

彼らは、サーブそのものよりも、相手からの返球と自分たちのスタイルに重点を置いているのです。


クリスも言う通り、サーブに絶対の正解はありません。

ラリーまで含めて考えたときに、効率良く点を取れるのが最良のサーブなのです。


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