日々の地道な努力が身を結び、かなりスピードのあるスマッシュが打てるようになってきた順平。
チームメイトにも褒められ、自信がみなぎる。
しかし、そんな順平に大垣は・・・
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日々の地道な努力が身を結び、かなりスピードのあるスマッシュが打てるようになってきた順平。
チームメイトにも褒められ、自信がみなぎる。
しかし、そんな順平に大垣は・・・
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コートに快音が響き渡る。
順平のスマッシュだ。
「いい音させてるな、順平。」
「すごいスピードですね、順平さん。」
「パワフルなスマッシュ。これぞバドミントンの醍醐味だよな。」
チームメイトたちもそのスマッシュを褒めてくれた。
(僕、うまくなってきたかも。)
皆に褒められ、気持ちが踊る。
今日は良い日になりそうだ。
「うぅ、しんどい~。」
少し遅れて後衛のスペシャリスト大垣がやってきた。
どうやら風邪をひいているようだ。
「だ、大丈夫ですか?大垣さん。」
「うん、なんとか。でもダジャレにいつものキレがないんだ。」
「キレ・・・あるつもりだったんですか?」
どうやら相当辛いようだ。
ダジャレはともかく、練習にいつものエネルギッシュさが感じられない。
午後の練習が始まった。
大垣を心配しつつも気持ちを切り替える順平。
やがて休憩時間がやってきた。
大垣は・・・見ているのがかわいそうになるくらい辛そうだ。
「大垣さん。本当に大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫大丈夫。バドミントンで汗を流せばきっと・・・」
(ああ、この人バドミントンが好きなんだなぁ。)
その姿に感心する順平。
しばらくして大垣が口を開いた。
「聞いたよ順平ちゃん。今日は良いスマッシュ打ってるんだって?」
「えっ?あっ・・・まぁ。」
「そうか~。それは良かったねぇ。」
「はい。これから一撃必殺の武器にしていくつもりです。」
その言葉で、さっきまでにこやかだった大垣の表情が硬くなった。
そして、風邪でかすれた声を振り絞りながら話を続ける。
「順平ちゃん。それ本気で言ってるの?」
「え?何かおかしいこと言いました?」
「まるで速いスマッシュ打てば勝てると思ってるみたいな言い方だね。」
大垣の真意が読めない順平。
血走った目で順平を見つめ、さらに話を続ける大垣。
「バドミントンのスマッシュが初速300km/hを超えるっていっても、手元に来るときには60km/hだよ。」
「は、はい。」
「スマッシュが速いだけでは決定打にはならない。僕の試合を見てればわかるはずだ。」
(じゃあ、スマッシュを打つ意味って一体何だ?)
考えこむ順平に、大垣は最後の力を振り絞って言葉を発した。
「スマッシュは相手の・・・ゴホッ、ゴホッ・・・時間を・・・ゴホッ・・・を奪うためのものだよ。」
ポイント
相手のバットを折る野球の豪速球とは違い、バドミントンではいくら速いスマッシュでも、それだけでは決定打にはなりません。
初心者相手ならばともかく、ある程度のレベルになれば、速いだけのスマッシュを拾うプレーヤーはゴロゴロいます。
バドミントンにおけるスマッシュの真の意味はほかにあります。
それは・・・
・判断の時間を奪い判断ミスを誘う
・移動の時間を奪い、不十分な体勢からのプレーを誘う
・テイクバックの時間を奪いスイングの精度を下げる
というように、『相手の時間を奪える』ことです。
速いスマッシュはゴールではありません。
次の攻撃を有利にするためのスタート。
大切なのはスマッシュを打ったその後です。
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