勝てる後衛のドロップの使い方

ドロップ

攻撃だけでなく、体勢を立て直したり、相手に上げさせるためのショットがあることを知る順平。

そこで、カットの練習を集中的に行うことにした。

しかし、そんな順平に、後衛のスペシャリスト大垣は・・・

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「カットのコツは、手首のひねりでコルクをこすり回転をつけること。」

なるほど。


今日も体育館には一番乗りの順平。

チームメンバーが揃う前に、教科書で予習をするのが習慣だ。

いちいち体育館で読む必要はないのだが、体育館の空気を吸うと集中して読める気がするのだ。


今日2番目に体育館にやってきて、順平に声をかけたのは、後衛のスペシャリストこと、大垣だった。


「あ、大垣さん。こんにちは。」

「やぁ、順平ちゃん。何読んでるの?」

「カットの打ち方です。もっともっと勉強しないと・・・」

「カットか。うーん・・・」

「ど、どうしたんですか?」

「ゴメン順平ちゃん。カットだとダジャレが浮かばないよ。」

「き、気にしないでください。」


今日もあのつまらないダジャレを聞かされるのか。

アレさえなければ良い人なんだけど・・・

そんなことを考えていると、大垣がさらに声を掛けてきた。


「カットの勉強してるみたいだけど、ドロップのページはもう読んだの?」

「ドロップですか?まあ一応は。でもスピードも遅いしカットの方が使えそうなので。」


大垣のまゆがピクリと動いたような気がした。

顔はいつもどおりだが、目が笑っていない。


「ふ~ん。順平ちゃんはそういう考え方なんだ。」

「えっ?何かまずいこと言いました?」

「いや別に。ところで順平ちゃん、今日のゲーム練習、僕と対戦しない?」

「もちろん大歓迎です。今日は負けませんよ!」

「今日はカットは使わないでドロップだけでやるからよろしくね。」

「ドロップだけ・・・ですか。」


スピードがあり、軌道も直線的なカット。

それに対して、カットよりゆっくり飛び、山なりの軌道を描くドロップ。

何度考えても相手が取りづらいのはカットの方に思える。

しかし、大垣はあえてドロップを使うと言う。

結局その真意がわからないまま、大垣との対戦時間がやってきた。


ゲームは中盤まで静かに進んだ。


順平は必死だった。

上げてしまえば大垣の強烈なスマッシュが飛んでくる。

絶対に上げてはダメだ。


それだけを考えて、1球1球ていねいに打ったおかげだろうか。

今のところ、大垣は沈黙を保っている。


しかし、しばらくして、ゲームが突然動き出した。

なかなか甘い球を上げない順平ペアにしびれを切らしたのか、大垣が強引に強打を打ってきたのだ。


ガッチリ守備体勢を敷き、なんとかしのぐ順平ペア。

早く攻撃に転じなければ!


そう思っていると・・・シャトルが消えた。

それがスマッシュとまったく同じフォームから繰り出されたドロップによるものだと気づいたのは、失点してしばらくたってからだった。


ある程度スピードのあるカットだったら拾えていたかも知れない。

しかし、これだけ緩急をつけられては、手も足も出ない。

その後も同じパターンはつづき、順平ペアは為す術もなく敗れてしまった。


ゲームが終わった後、大垣は言った。


「ドロップよりカットの方が使えるんじゃなかったの?」

「・・・」

「バドミントンのショットに、使えないものなんて1つもないんだよ、順平ちゃん。」

ポイント

ドロップに比べ、飛行速度が速いカット。

回転のかけ方でシャトルの飛び方をコントロールできるメリットもあるので、こちらの方が効果的だと思われがちです。


ただ、ドロップも使い方次第では、カットにはないメリットを発揮します。

たとえば今回ご紹介したように、早いゲーム展開では、緩急の差が大きいドロップの方が相手を崩せる場合も。

また、大きく崩され体勢を立て直すのに時間がほしい時は、すぐに返球のくるカットより、滞空時間の長いドロップの方が時間を稼げます。


大垣のセリフにもある通り、バドミントンのプレーにムダなことはありません。

その場限りではなく、大きな流れの中でベストな選択ができるよう、広い視野を持てるよう頑張りましょう。


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