パートナーとの信頼関係を壊す一言
練習
どんな名指導者だってひとりの人間。
失敗や間違いを犯すことだってあります。
そういう意味では指導者も教え子たちと同じ、成長過程の人間です。
ただ、指導に携わるものとして、ひとつだけ犯してはいけない間違いがあります。
それはたった一言の禁句です。
これを使うと、教え子との信頼はもちろん、指導者としての能力まで壊すことになります。
それがどんな言葉か、想像できますでしょうか。
本編を読む前に一度、自分なりに答えを探してみてください。
それが終わったら、ストーリーをご覧ください。
いよいよ夏本番。
体育館に入ればあっという間に汗がふき出してくる。
バドミントン部にとって、一番過酷な季節だ。
そんなある日。
いつものように練習を見回る岡崎。
大会に向けて、どの部員も懸命にシャトルを追っている。
やがて練習も後半に入り、ゲーム形式の練習が始まった。
「おい、櫻井!お前はどうしていつも詰めが甘いんだ!?お前のせいで今まで何度逆転されたと思ってる!?」
3年生の山田がパートナーの櫻井を怒っている。
繊細な櫻井は、本当に申し訳なさそうに山田の叱責を聞いている。
山田は口が悪い。
もちろん、悪い人間ではないのだが・・・
ちょっと言い過ぎでは、と思いつつも、自分の練習を続けるバドミントン部員たち。
だが、岡崎は違った。
厳しい口調で山田に詰め寄る
「ちょっと待て、山田。コンビを組んでるんだったら、問題を責めるより一緒に考えるべきだろう?」
「すみません。でもそんなに大げさに怒らなくても良いじゃないですか。」
「大げさ?一所懸命プレイしている櫻井を否定することが大げさか?そこに何も感じないパートナーを叱ることが大げさか?」
いつも穏やかな岡崎の厳しい口調。
山田たちはもちろん、部員全員が静まり返った。
体育館の雰囲気を感じて、岡崎はコホンと咳払いをしてから話を続けた。
「怒鳴って悪かった。でもな、パートナーのことを考えられなくなったらコンビは終わりなんだ。」
ポイント
もし一度でも
「どうしてお前は【●●(相手の悪いところ)】なんだ!?」
という言葉を教え子に投げかけたことがあれば、今すぐに二度といわないと誓ってください。
この言葉を投げかけられた相手は、自分の全てを否定されたと感じ、心に大きな傷を負います。
そして、この言葉にはもう一つ恐ろしい弊害があります。
この言葉を使うということは、
「自分は教え子の悪いところに気づいていながら直せない指導者なんだ」
と自己暗示をかけているのと同じです。
この暗示にかかってしまうと、他の教え子に対する指導にも影響が出てきます。
この言葉を封じるのは簡単です。
口から出そうになったら代わりに
「自分はどうしたら【●●(相手の悪いところ)】を直せるかな」
と置き換えるのです。
口に出すことによって、スムーズに気持ちを切り替えることができます。