内気な教え子と良い関係を作る接し方
指導者
こちらから声をかけないと、口をきいてくれない人っていますよね。
ちょっと誰かに相談すれば解決することなのに、一人で抱えていつまでも悩んでいたり。
言わなければいけないことなのに、言わなかったり・・・
コミュニケーションと人間関係の重要性を説いたり、とにかく声を出すよう叱ってみたり。
いろいろやったけれど効果がない。
しかし、そんなとき「あいつはそういう奴」で片付けてしまっては指導者失格です。
ではどうすれば良いのでしょう。
ストーリーをご覧ください。
バドミントンはできないのにバドミントン部の顧問をしている岡崎。
その指導力と人柄で、相談者は後を絶たない。
最近では他の部の部員や、顧問の先生も相談を持ちかけてくることがある。
具体的な指導法から、人間関係まで、その相談内容は様々だ。
小暮は、そんな岡崎を尊敬しているバドミントン部の3年生。
今日も岡崎をつかまえて話しこんでいる。
「先生はいろいろな人に慕われてうらやましいです。」
「褒めたって何もでないぞ。」
「才能なのかなぁ。きっと、指導で失敗したり、悩んだりしたことなんてないんでしょうね。」
小暮が発した何気ない一言。
だが、岡崎の反応は予想とは違った。
「あるよ。悔やんでも悔やみきれない失敗。」
「え?」
少しだけ悲しそうな顔。
そして、興味津々の小暮の様子を察したのか、静かに語りだした。
「昔、バスケ部の顧問をしていたときのことだ。部員のひとりがこっちから話を振らないと口をきかない奴だったんだ。」
「へぇ、バスケ教えてたことあったんですね。」
「それで、あまりに何も言わないから注意したんだ。『まずはどんな小さなことでも口に出せ。』ってな。」
「・・・」
「何度か話しかけてくれることはあった。でも、口下手で何が言いたいのかわからなかった。だからこっちも聞き流すようになってしまったんだ。」
「で、どうなったんです?」
しばらくの沈黙の後、岡崎は口を開いた。
「やめたよ、部活。」
「えっ?」
「ひどいスランプにかかって抜け出せなくなってしまったんだ。早いうちに誰かに相談していれば、抜け出せたかもしれないけれど・・・」
「そ、そんな・・・」
「俺は・・・指導者として教え子を見捨てたんだ。」
「・・・」
「それから決めたのさ。誰からのどんな話でも精一杯聞こうって。」
「精一杯・・・聞く・・・」
「そう。話がわからなかったり、自分の欲しい答えが得られなくても、それは全部自分のせいだって思うようにしてるのさ。」
ポイント
よく、「伝わらないのは伝える側の問題だ。」と言われますよね。
しかしこれは、コミュニケーションを単なる意思伝達のツールとしてしか見ていない人の考え方です。
コミュニケーションは伝える側と聞く側、両方がいて初めて成り立つものです。
つまり、どちらの問題、という考え方自体が、まず的外れなのです。
口を開いてくれない側に問題がある場合もあるでしょう。
しかし、だからといって聞く側が門戸を閉ざしては、そこでジ・エンドです。
逆もまた然り。
聞く側の問題を伝える側が切り捨てれば、待っているのはバッドエンド。
指導者と教え子の人間関係は、そのままチームの人間関係に直結します。
教え子を見捨てる指導者にならないよう、このストーリーをしっかりと胸に刻んでくださいね。