教え子との関係が向上する評価法
チーム
新人さんがちょっと失礼なことをしても、あまり腹は立ちませんよね。
「まあ、こんなものか。」と割り切れます。
でも、長年慣れ親しんだチームメイトや教え子だと、話は一変します。
「何年このチームでやっているんだ!」
「何度同じことを言えば分かるんだ!!」
と、いうことになってしまいます。
本来、結束を強めなければいけないチームが、部外者とは仲が良いのに、身内だとカリカリしている、という現象が起きてしまうわけです。
どうすれば、この問題を解消できるでしょうか。
それでは、ストーリーをどうぞ。
もう5月だというのに、冷え込む朝の続く大阪。
日が登って、ようやく暖かくなってきたと思ったら、夕方になるとまた肌寒い空気があたりを包む。
しかし、体育館の中で、ましてやハードな練習にいそしむバドミントン部員たちには、そんなものは関係ない。
皆、あごから汗をしたたらせている。
そんな、ゲーム練習中のことだった。
和やかな体育館の雰囲気が、突然切り裂かれた。
「お前は何度言ったら、言う通りに動くんだ!」
「そんなにギャーギャー言われて、直す気なんか起こるか!」
「だったらやめちまえ!!」
「お前がやめろ!!」
ほかの部員たちが止めに入らなければ、取っ組み合いになっていただろう。
そして15分後、ふたりは並んで進路指導室の机の前に座っていた。
「またお前らか。」
バドミントン部顧問の岡崎は、ほとほとあきれ果てたといった表情でふたりを見ていた。
コーヒーをすすり、ふたりにもコーヒーとお茶菓子を促したあと、話を切り出した。
「もう2年もコンビ組んでるのに、よくそんなにケンカできるよなぁ。」
「すみません。」
「そんなにケンカばっかりするんだったら、コンビなんか解消しちまえばいいのに。」
「・・・」
黙り込んでしまった2人。
岡崎は話を続ける。
「今のところ、うちで一番うまいのは・・・まあ3年の加藤かなぁ。」
「そうですね。」
「じゃあふたりに質問だ。加藤より自分のパートナーの方が良い点って何だ?」
2人はしばらく考えた。
そして・・・
「僕が弱気になったときに励ましてくれるところです。」
「俺のことを思いやってくれるところです。」
岡崎は、満足そうに笑った。
そして、何も言うことなく2人を帰した。
それからもこの2人はたびたびケンカをした。
しかし、そのたびに仲直りしてコンビをつづけている。
そして、ほんの少しずつだが、ケンカの回数は減っていっている。
ポイント
岡崎先生は、なぜ何も言わずに2人を帰したのでしょうか。
それは、ふたりが相手のことを「加点主義」で見ることができているからです。
つまり100点からスタートして、欠点をマイナス評価していくのではなく、ゼロからスタートして、長所をプラス評価していく評価の仕方です。
彼らは、岡崎先生の講義によって、より加点主義で相手を見ることができるようになったわけです。
その結果、ふたりのケンカは減ってきたのです。
相手が身内だと、どうしても欠点が目につき、減点主義で採点しがちです。
特に熱心な指導者の場合、教え子への期待が大きい分、その傾向が顕著です。
甘やかさないことと、減点主義はまったく違います。
名指導者とは、加点主義と相手のためになる厳しさ、その両方をコントロールできる人のことです。