ワンランク上のコミュニケーションとは?

コミュニケーション

チームの指導者は、教え子全員と密なコミュニケーションを取らなければいけません。

そのための時間と労力を捻出するのは、指導者として重要なスキルです。


そして、それと同じくらい大切なスキルがもうひとつあります。

これができるようになると、教え子との距離はさらに縮まり、ワンランク上のコミュニケーションができるようになります。

それではストーリーをどうぞ。

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生徒たちは夏休みを満喫しているが、岡崎たち職員は今日も学校に来ている。

夏休みが明ければ新学期。

やらなければいけないことは山ほどある。


バドミントン部顧問の岡崎は、机の前で猛烈な眠気と戦っていた。

猛暑のせいだろうか、昨晩はよく眠れなかった。

ほかの職員も同じようで皆、眠そうな顔でノロノロと仕事をしている。


岡崎は突然立ち上がり、職員室を出た。

眠気覚ましに散歩をしようと考えたのだ。


グラウンドに出ると、ムッとする熱気と肌を刺す日差しにめまいがした。


「あ、岡崎先生。お仕事はもう終わりですか?」


声をかけてきたのは体育教師の横山だった。

陸上部の練習を指導しているようだ。

ポロシャツが汗で透けている。


どうせ日が落ちるまで仕事ははかどらないし、バドミントン部も休みだ。


岡崎はしばらく陸上部の練習を見学することにした。

どの部員たちも、自分の限界を超えようとがんばっている。


「いいぞ川田。練習の成果が出てきたな。」


走り高跳びを指導していた横山が、川田と呼ばれた生徒の肩を叩いていた。

しかしあまりの暑さからか、川田は小声で礼を言っただけだった。


それを見ていた岡崎は、タオルで汗を拭いている川田に声をかけた。


「川田君」

「あ、岡崎先生。」

「よく朝にひとりで練習してるの見てるよ。今日もがんばってるね。」

「はぁ。どうも。」
 
「川田君ががんばっている姿を見ると、俺もがんばらなきゃって気持ちになってくるんだ。ありがとう。」


しばらくして、グラウンドを後にする岡崎。

すると、その背中に大きな声がかけられた。


「先生、ありがとうございます!」


振り返ると、川田が日に焼けた笑顔で手を振っていた。

ポイント

同じようにがんばっていることを褒められたのに、岡崎先生と横山先生で、川田君の反応がこれだけ違ったのはなぜでしょう?


それは、「You」と「I」の違いです。


横山先生の場合、

「川田君ががんばっている事実」を褒めました。


もちろん悪い気はしないでしょうが、これではただ事実を述べただけ。

極端に言えば、ニュースと同じです。


それに比べて、岡崎先生の場合は、

「川田君の頑張りが【自分へのプラスになっていること】」に対して感謝をしています。

ふたりの距離はグッと縮まりますよね。


指導者と教え子の人間関係は1対多数が基本。

「事実を述べただけ」のやりとりになりがちです。

しかし、そこに血を通わせるのが、優れた指導者のコミュニケーションなのです。


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