教え子の本質を見抜く指導者の視点とは?
指導者
どんなバドミントンチームだって、うまいプレイヤーと下手なプレイヤーがいます。
競技志向のチームだったら指導者は、ついうまいプレイヤーにつきっきりになってしまいます。
「そんなことはない!俺は全員のことをちゃんと見ているぞ!!」
という方に質問です。
『あなたは、プレイヤーの何を見ていますか?』
スマッシュ、サーブ、レシーブ、フットワーク・・・いろいろありますね。
しかし...
一流コーチと呼ばれる指導者の視点はもっともっと深いんです。
さっそく「一流コーチの視点」を探しに行きましょう。
それではストーリーをご覧ください。
練習が終わった体育館は、さっきまでの熱気が嘘のように静まり返っている。
岡崎は誰もいない体育館の雰囲気が好きで、練習が終わった後もそのまま物思いにふけるのが習慣になっている。
しばらくして、生徒が誰もいないのを確認したとき。
「先生、ちょっといいですか?」
岡崎に声をかける生徒がいた。
2年の櫻井とコンビを組む3年の山田である。
「で、どうした?」
「櫻井のことなんですけど。」
「おう。」
「最近あいつのやる気がないみたいなんです。今年が最後だから精一杯頑張りたいのに、あいつがアレじゃ...」
「原因は聞いてみたのか?」
「やる気のない奴の話なんて聞きたくないです。」
冷たい風が吹いて、二人は思わず身震いをした。
やがて、しばらく黙っていた岡崎が口を開いた。
「ところでお前さ、今あいつがハマってるマンガ知ってるか?」
「はい?」
「今日、あいつが朝何を食べたか知ってるか?」
「...いえ。っていうかそんなことどうでもいいですよ。」
岡崎は少しだけ語気を強めた。
「じゃあ今あいつがどんなプレイをしたいと思っているか知ってるか?」
「...ええと。」
「あいつが苦手だと思っているプレイを克服するためにどんな練習をしているか知ってるか?」
「...」
山田はすっかり黙り込んでしまった。
それを見た岡崎はジャージのチャックを引き上げてから、話を続けた。
「お前は『そんなことどうでもいい』って言ってたけどな。相手のそんなことも知らないで解決策なんて出せるのか?」
「・・・」
「確かに直接バドには関係ないかもしれないけどな。そんなことって視点を持っている限り、大切なことも見えなくなっていくんだよ。」
翌日、岡崎が少し早めに体育館に行くと、山田と櫻井の姿があった。
耳をすまして聴くと、昨日やっていたバラエティ番組の話のようだった。
どこかギクシャクしていたが、今までのような険悪な雰囲気はない。
(がんばれよ。)
変わり始めた二人に、心の中でエールを送る岡崎であった。
ポイント
いかがですか?
一流コーチの視点、お分かりいただけましたでしょうか。
プレイを正確に分析する目は、適切な指導をするために重要です。
でもそれだけでは50点。
そのプレイヤーの人間性を把握した指導ができて、初めてプレイヤーを見ていると言えるのです。
付き合いが長くなったり、特に目をかけているプレイヤーがいたりすると、コミュニケーションが少なくなっていきます。
でも、プレイヤーは日々変化しています。
昨日好きだったことが、今日は嫌いになっていることだって。
もっと極端なことを言えば、昨日得意だったプレイが今日は苦手になっていることだってあり得るのです。
その変化を掴める指導者と掴めない指導者、どちらがプレイヤーを伸ばせるかは火を見るより明らかです。
わかりますか?
バドミントンだけを見ての指導していては、一流のコーチとは言えません。
一流のコーチが見なければいけないのはその先です。